ともに時を重ねる

 座間市にある地域活動支援センター「えのきの里」にお邪魔しました。迎えて下さったのは、所長の山口新さんです。ちょうど作業に入る前のお茶の時間だったので、そのままコーヒーをごちそうになりました。一軒家のアットホームな雰囲気の中、おしゃべりを楽しんだり、時刻表とにらめっこしていたり、みなさん思い思いの時間を過ごされています。

 

2階にはさをり織りの機械とできた製品がありました。似ているような形でもどれ一つ同じものがありません。こぼれている糸も味わいとして活かされています。タグにもメンバーのみなさんが描かれた絵が採用されていて、全部で4パターンあるそうです。値札には織ったご本人のお名前があり、誰の織りかを知ることができます。織ったものを製品にしていくのは職員のみなさんのアイデアです。伺った時には、リュックサックにしようと工夫されているところでした。

 

「製品にしていくのもいいのだけれど、大きな織物としてのさをりの良さも忘れないようにしたいんです」と山口さん。織物そのものの力から職員のみなさんが刺激を受けて、製品に反映させていました。

 

途中一人の女性の方を紹介してくださいました。ご自身で詩を書いたり、英文のコンテストに応募されたりしているとのこと。秋に行った山梨県立美術館では、誰よりも熱心に一枚一枚の絵を見つめていたそうです。「芸術文化に興味を持っている人もいるので、どのような膨らませ方があるのか、気軽に相談するところがあるといいのですが」。

 

座間市内には、もともと地域作業所として活動していた事業所の連絡会、座間市小規模障害者施設連絡協議会があり、年間を通じて研修や交流の機会を持っています。横のつながりもあり、近隣の施設とも常にやりとりがあるそうです。

 

この場にいるこのメンバーだからできることを考えている「えのきの里」のみなさん。受注のお仕事だけをしないところには、「創設時の所長の『つくり出すよろこびを感じてもらいたい』という思いを受け継ぎたい思っているのかもしれません」とお話してくださいました。

 

お話が終わった時に事務室のドアを開けると、パンの良い香りに包まれていました。ひとつのテーブルをみんなで囲んで、お昼の時間です。職員と利用者という関係ではなく、一緒に時を過ごす仲間として、ひとりひとりの楽しさや喜びともに探す場がありました。

 

(田中 2018.11.25訪問)